高速情報協同組合の法人ETCカードとは?料金・審査・特典まで解説

ビジネスで高速道路を利用する場面では、「ETCカード」が欠かせません。特に営業車や社用車を頻繁に使用する企業にとっては、通行料金の支払いや経費処理を効率化できる便利なアイテムです。
法人用ETCカードには、クレジット機能付きとクレジット機能なしの2種類があります。中でも「クレジット機能なし」のカードは、審査のハードルが低く、新設法人や個人事業主でも申し込みやすいのが特徴です。
本記事では、高速情報協同組合が提供する法人ETCカードに焦点を当て、料金体系や審査内容、メリット・デメリット、他組合との比較などを詳しく解説します。
初めて法人ETCカードを導入する方にもわかりやすくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
高速情報協同組合とは?
まずは、高速情報協同組合の概要や特徴について解説します。
組合の概要と運営体制
高速情報協同組合は、中小企業の事業をアシストする組合として1993年に設立されました。経済産業省に認可された正式な団体であり、沖縄県を除く46都道府県でサービスを提供しています。
組合の理念は、異業種交流や共同購買・共同利用を通じて事業経営の効率化を進める点にあり、中小企業の経営を支援するためにさまざまな共同事業を展開しています。
たとえば、自動車燃料や業務用資材、通信機器などを対象とした共同購入制度や、通話料の団体割引制度の共同精算などがあります。
また、経営や技術の改善向上を目的とした教育事業や情報提供活動も行っており、組合員の事業活動を多方面から支援しています。
このような取り組みの一環として提供されているのが、法人ETCカードです。通行料金の一括管理や割引制度の活用を通じて、経費処理の効率化を図ることができます。
どんな人・企業が加入できるのか
高速情報協同組合に加入できるのは、「中小企業等協同組合法」に定められた中小企業が原則です。対象には法人だけでなく、個人事業主も含まれており、幅広い事業者が申し込み可能です。
資本金や従業員数に関する厳格な制限はなく、設立年数の浅い企業や小規模な事業でも加入できます。
なお加入時には、出資金として1万円(1社につき1口)が必要です。これは組合制度に基づいたもので、カードの初期費用とは別に扱われます。
ガソリンカード・コーポレートカードなどの種類
高速情報協同組合では、以下のカードを提供しています。
・法人ETCカード
・ETCコーポレートカード
・法人ガソリンカード
法人ETCカードは、クレジット機能が付いていないシンプルな通行専用カードで、開業間もない法人や個人事業主でも申し込みやすいのが特徴です。
ETCコーポレートカードは、高速道路の利用頻度が高い事業者向けに、「大口・多頻度割引制度」が適用されるカードです。年会費629円(税込)がかかりますが、走行距離が多い企業は割引額で元が取れる設計です。
法人ガソリンカードは、出光、ENEOSなど指定のガソリンスタンドでの給油に使えるカードです。法人ETCカードと併用することで、高速料金と燃料費の請求を一元化でき、経費処理や帳簿管理が効率化されるメリットがあります。
高速情報協同組合の法人ETCカードの特徴

次に、高速情報協同組合の法人ETCカードの特徴を見ていきましょう。
クレジット審査なしで発行でき、新会社でも作れる
高速情報協同組合の法人ETCカードは、クレジット機能が付いていない通行専用カードのため、一般的なクレジットカードのような審査はありません。
信用情報の照会も行われないため、金融機関の与信に不安がある場合でも、事業実態が確認できれば発行される可能性が高く、申し込みやすいのが大きな特徴です。
開業直後の法人や個人事業主にとっても導入しやすい制度設計となっており、はじめて法人ETCカードを利用する方にも適しています。
対応する車両
高速情報協同組合の法人ETCカードは、ETC機器が装着された軽自動車・普通車・小型トラックに対応しています。
業種による制限はなく、軽貨物業、訪問営業、配送業など、車両を使う幅広い業態で利用可能です。また、1つの事業者で複数枚のカードを発行することも可能なため、営業車や社用車を複数台運用している企業にも適しています。
ETCマイレージによる還元・割引制度に対応
高速情報協同組合の法人ETCカードでは、ETCマイレージの還元があります。
ETCマイレージとは、走行料金に応じてポイントが自動的に加算される制度で、貯まったポイントは無料通行分として還元されます。
とくに高速道路の利用頻度が高い事業者にとっては、実質的な経費削減につながるお得な仕組みです。
加えて、以下のような時間帯別の割引制度にも対応しています。
最大割引・還元率 | 条件 | |
休日(土日祝日の終日) | 30% | 軽自動車および普通車のみ |
平日朝夕(平日6~9時、17~21時) | 5〜9回利用:30%還元 10回以上利用:50%還元 | 還元は最大100km分まで |
深夜(全日0~4時) | 30% | 特になし |
このように、通常通りETCカードを使うだけで自動的に割引が適用されるため、特別な手続き不要でコストを抑えられるのが魅力です。
料金体系・手数料の仕組み
では次に、高速情報協同組合の法人ETCカードの料金体系・手数料の仕組みについて見ていきましょう。
発行手数料・年会費・カード維持費
発行手数料・年会費・カード維持費については、以下の通りです。
出資金 | 1社10,000円 |
カード発行手数料 | 1枚550円(税込) |
取扱手数料 | 1枚550円(税込)(年1回) |
事務手数料 | 走行料金の8% |
※出資金については「出資金制度」で詳しく解説
初期費用としてかかる料金は「出資金」「カード発行手数料」、年1回発生する費用として「取扱手数料」があります。
なお、カード発行手数料・取扱手数料は発行枚数に応じて加算されるため、複数車両に導入する場合はコストが増える点に注意が必要です。
また、事務手数料は毎月の走行料金に対して8%で計算されるため、利用頻度が高い事業者ほど手数料総額も大きくなります。年間を通じた運用コストをあらかじめ想定しておきましょう。
通行料金の支払いサイクル
高速情報協同組合の法人ETCカードは、毎月末で利用額が締められ、翌月20日頃に請求書が発行・通知されます。
支払いはその翌月、つまり利用月の翌々月の8日に、登録口座から自動引き落としされるスケジュールです。
請求書の発行タイミングは、組合のホームページ上に案内が掲載されるため、会員専用ページで都度確認することが可能です。
Web明細・利用状況の確認方法
ETCカードの利用料金は、会員専用のWeb明細サービスにログインして確認できます。
通行料金や走行履歴は、PDF・CSV形式でのダウンロードに対応しており、ファイルとして保存・共有ができるため、経理業務や精算処理にも活用しやすい仕様となっています。
また、Web明細はETC利用照会サービスと連携でき、「いつ」「どの車両が」「どの路線を通行したか」といった詳細な走行データの照会も可能です。
月次レポートや交通費報告が必要な事業者にとって、管理の手間を減らし、正確性を高めるツールとして役立ちます。
出資金制度と注意点
高速情報協同組合の法人用ETCカードには、出資金制度があります。制度の仕組みについて詳しく見ていきましょう。
出資金の金額と徴収タイミング
高速情報協同組合の法人ETCカードを利用するには、組合加入時に1社あたり10,000円の出資金を預ける必要があります。
出資金は1社単位での徴収であり、カードを複数枚発行しても金額は変わりません。
支払いは、Web申し込み後に送付される書類案内に沿って行います。必要書類を返送した後に出資金の振込案内が届き、指定口座へ入金する流れです。
なお、カード発行手続きは出資金の入金が確認されてから進むため、早めに振り込むことでスムーズな発行につながります。
解約時の返金ルールと時期
出資金は、カードを解約する際に返金される仕組みです。返金を受けるには、退会申請書と返金先の口座情報を組合へ提出する必要があります。
これらの書類が正しく受理されると、通常は1〜2ヶ月以内に指定した口座へ出資金が返金されます。
ただし、口座情報の記入ミスや申込書の未記入、必要書類の同封漏れなどの不備がある場合は、返金までに時間がかかることがあります。
スムーズに返金を受けるためには、あらかじめ提出書類の内容をよく確認し、ミスのないよう手続きすることが重要です。
審査基準と落ちるケース
高速情報協同組合の法人ETCカードは、クレジット機能が付いていないため、信用情報(クレジットスコア)に基づく審査は行われません。しかし一方で、組合独自の基準による入会審査は存在します。
ここでは、高速情報協同組合の法人用カードを申し込む際に知っておきたい申し込みの条件、および審査について解説します。
必要な書類と申し込み条件
法人ETCカードの申し込みの場合、必要な書類については以下の通りです。
法人・個人事業主共通で必要なもの | 車検証・セットアップ証明書・代表者の運転免許証・出資金10,000円 |
法人のみ必要なもの | 履歴事項全部証明書(6ヶ月以内) |
個人事業主のみ必要なもの | 所得税確定申告書(開業届でも可) |
まず、法人・個人事業主に共通で必要なものは、車検証・セットアップ証明書・運転免許証といった車に関する書類と、出資金10,000円です。
もし車検証やセットアップ証明書が手元にない場合は、車の販売店などで再発行の手続きをしましょう。なお、レンタカーの場合は、車検証やセットアップ証明書の提出の必要はありません。
また、法人ETCカードでは法人に関する書類も用意しましょう。法人の場合は履歴事項全部証明書、個人事業主の場合は確定申告書もしくは開業届が必要です。
履歴事項全部証明書は、発行から6ヶ月以内のものが必要です。期限を過ぎた書類は審査で受理されないため、取得日には注意しましょう。
審査落ちが起こるケースと対処法
高速情報協同組合の法人ETCカードの審査に落ちる場合、以下のようなケースが想定されます。
- 書類不備や申込時の電話確認が取れない
- 事業実態が確認できない(例:開業届や確定申告書の提出がない)
- 過去の強制退会歴などがある
高速情報協同組合の法人ETCカードは、事業者や個人事業主を対象としたサービスです。そのため、書類に不備がある場合や、事業実態が確認できない場合は審査に通らない可能性があります。
たとえば、開業したばかりの個人事業主であっても、開業届など事業を証明する書類は必須です。
また、過去に料金の延滞が繰り返されて強制退会となった履歴がある場合も、審査に影響することがあります。
審査のハードルは?一般的なクレカとの違い
高速情報協同組合の法人ETCカードは、一般的なクレジットカードに比べて審査のハードルが低いと言えます。
その理由は、クレジット機能が付帯しておらず、信用情報の照会が行われないためです。自己破産や過去の金融事故歴があっても、必要書類が整っており事業実態が確認できれば、開業直後の個人事業主や設立間もない法人でも発行できる可能性があります。
ただし、どんな場合でも審査に通るわけではありません。反社会的勢力に関係する申込や、架空名義・書類不備については厳しくチェックされます。審査に進む前に、提出書類に漏れや誤りがないかを必ず確認しましょう。
また、事業の実態確認として、組合から申込者宛てに電話連絡が入る可能性もあります。この確認に応じないと審査が保留になることもあるため、必ず対応するようにしましょう。
申し込み方法と発行までの流れ
高速情報協同組合のカードの申し込みの流れは、以下の通りです。
- Webから申し込み
- 組合から入会書類が郵送される
- 必要書類を返送する
- 出資金(10,000円)を振り込みする
- カードが簡易書留で届く
カード発行までの日数に関しては、書類到着後約10日程度とされています。ただし、出資金を早めに入金した場合は、もう少し発送が早くなる可能性があります。
少しでも早くETCカードが手元に欲しい場合は、必要書類を事前に準備し、出資金の振り込みを早めに行いましょう。
ETC協同組合との比較
高速情報協同組合とETC協同組合の法人ETCカードについて、比較しましょう。
発行組合 | 高速情報協同組合 | ETC協同組合 |
基本情報 | 中小企業の事業をアシスト | 中小企業の事業をアシスト事業経営をサポート |
サービス内容 | ETCカード (クレジット機能なし) | ETCカード (クレジット機能なし) |
事業地区 | 46都道府県 除外:沖縄県 | 42都道府県 除外:青森県、和歌山県、宮城県、島根県、長崎県 |
対象ユーザー | 中小企業の法人経営者・個人事業主 | 中小企業の法人経営者・個人事業主 |
出資金 | 10,000円 | 10,000円 |
カード発行手数料(1枚) | 550円(税込) | 880円(税込) |
取扱手数料(年1回) | 550円(税込) | 880円(税込) |
走行手数料 | 8% | 8% |
明細確認方法 | Web明細 | Web明細 |
料金の締め日 | 月末 | 月末 |
支払い日 | 翌々月8日 | 翌々月5日か6日 |
割引制度 | 休日割引30% 深夜割引30% 平日朝夕最大50% | 休日割引30% 深夜割引30% 平日朝夕最大50% |
サポート体制 | Web・電話(営業時間:平日9時~12時/13時~17時) | メール・電話(FAX) |
高速情報協同組合とETC協同組合は、いずれもクレジット機能を持たない法人ETCカードを発行している点では共通していますが、いくつかの違いがあります。
まず、対応している地域に違いがあります。高速情報協同組合は沖縄県を除く46都道府県でサービスを提供している一方、ETC協同組合は、青森県・宮城県・和歌山県・島根県・長崎県を除いた42都道府県が対象地域です。
次に、カードの発行手数料と取扱手数料にも違いがあります。高速情報協同組合では、発行手数料・取扱手数料ともに550円(税込)ですが、ETC協同組合ではそれぞれ880円(税込)とやや高めに設定されています。
発行枚数が多いほど年間コストに大きな違いが出るため、特に複数枚のカードを発行したい法人にとっては、高速情報協同組合の方がコストパフォーマンスに優れていると言えるでしょう。
一方で、沖縄県での利用を予定している場合や、発行枚数が少なく利用頻度も限定的な事業者にとっては、ETC協同組合も選択肢となります。
両者の特徴を踏まえたうえで、自社の所在地や運用スタイルに合った組合を選ぶことが重要です。
まとめ|高速情報協同組合は導入ハードルの低さと実用性を両立した選択肢
ここまで、高速情報協同組合の法人ETCカードについて解説しました。
このカードの大きな魅力は、クレジット審査が不要で申し込みやすく、手数料も抑えられている点です。ETC協同組合と比べても、発行手数料・取扱手数料が安いため、複数枚のカードを運用する企業や、コストを重視する中小企業にとって有利です。
さらに、月末締め・翌々月引き落としという支払いサイクルの柔軟さも、資金繰りの計画を立てやすくするポイントです。
「車を業務で使うが、クレジット機能までは必要ない」「開業間もないがETCカードを導入したい」といったニーズを持つ法人・個人事業主にとって、高速情報協同組合の法人ETCカードは非常に実用的な選択肢と言えます。
自社の運用に合った法人ETCカードを選び、経費管理をよりスマートに進めましょう。